東洋思想ノート_中国古代思想_形式論理学の完結(3)

これは「東洋の合理思想」という本をテキストとして勉強したノートです。

<2> 『韓非子』の矛盾律

1.戦国を背景に鋭い人間洞察

 合理性の根本原理である矛盾律が『韓非子』に初めて明瞭に論じられる
 後世の儒者たちから悪徳の代表のように非難される
 しかし必ずしも悪徳の書ではなく、信賞必罰の思想など、極めて近代的・合理的は法治主義
 合理的精神の現れ=矛盾律の提示

2.破れぬ盾と破る矛とは両立できない
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楚の国に盾と矛を売る人がいました。自分が売る盾を自慢して「私のこの盾の堅固なことときたら、どんなに鋭利な刃物でも突き通すことはできません。また自分が売る矛を自慢して「私のこの矛の鋭利なことと言ったらどんな堅固なものでも貫き通してしまいます」と言いました。それを聞いてある人が「ではあなたの矛であなたの盾を突いたらどうなりますか?」と尋ねると、その人は何も言うことができなくなってしまいました。

破ることのできない楯と何ものをも破る矛とは同時に存立することはできない(不可同世而立)
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矛盾律 : 一つの命題が同時に真でありかつ偽であることはできない
 古代ギリシアではプラトンおよびアリストテレスが立てたもので、合理的思考の根本原理
 → 古代中国の論理思想・合理的精神は韓非によって完成したとも言える

3. 『韓非子』矛盾律の構造

「韓非子」は必ずしも「形式論理学上の矛盾律ではない?」
以下 『韓非子』の説を分析

(1) 楚人の持っている矛を とする
(2) 彼の持っている楯を とする
(3) 破るという作用を とする
(4) 一般に「矛 が楯 を破る」ことは
 
で示される
(5) 「矛 が楯 を破る」ことは
 
で示される
(6) 命題「吾が楯の堅個なることは、何ものもそれを破ることができないほどである」は「如何なる矛もこの楯 を破ることはない」という全称否定命題
 
で示される
(7) 命題「吾が矛の鋭利なることは、何ものをも破らむことはない」は「この矛 はすべての楯を破る」という全称肯定命題
 
で示される
(8) (6)と(7)とを前提とした場合、「この矛 がこの楯 を破る」ということはどうなるかというと
(8)・1 まず(6)の全称否定から、
 
(8)・2 また(7)の全称肯定から、
   
(8)・3 ゆえにこの2式を合わせると
 
(8)・4 しかるに、(6)と(7)とが前提として成立するならば、(8)・3 の左辺は真であるから、推理規則にしたがって、その右辺も真となるべきである。すなわち
 
となる。この命題「この矛 はこの楯 を破らず、しかも破る」という命題であり、矛盾命題である。

「韓非子」は実例という形ではあるが、矛盾の構造を明確に示し、矛盾律を打ち立てた
古代中国の形式論理学は『荀子』の概念論理学に 『韓非子』の矛盾律を加えることによって完結
ここに判断論・推理論を構成すれば形式論理学となったが、そこまで思索を発展させらなかった

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