山田正紀氏の「カンパネルラ」を読んだ。

文庫版の「カンパネルラ」を入手し、読了しましたので、感想などを書いておきます。

希代のストーリーテラーの山田氏の作品なので、一気に読んでしまいました。

まず、舞台設定は「銀河鉄道の夜」の第4次稿が未だ発見されておらず、 第3次稿までしか存在が確認されていない世界です。よって我々の世界とは別の世界の話となります。

語り手というか主人公の「ぼく」は16歳で、母親は「銀河鉄道の夜」の第4次稿の存在を信じて調査している賢治研究者だったのですが、最近亡くなってしまい、その遺骨を花巻の豊沢川に散骨して欲しいという遺言を実行するため東北新幹線の「新花巻」に向かうところから始まります。(実はこの直後にある出来事があるのですが、それは伏線の仕込みになっています。)

新花巻に着いてタクシーで大沢温泉に向かったのですが、新幹線の車内に母親の骨壺を忘れてきたことに気付くのです。(これも仕込みになっています。)走って戻ろうとするときに「発破だ、発破」という声を聴いて意識を失うことになるのです。

意識が戻ると路面電車が現れ、それはとっくに廃線となっていた花巻電鉄だったのです。そこでその電車に乗り込むと時代が賢治さんが亡くなる2日前の昭和8年9月19日だということが判明します。タイムスリップなのでしょうか?

後に、「ぼく」がジョバンニと認識されること、賢治さんは5年前の昭和3年に亡くなっていて、妹トシが昭和8年の時点で生きていて、娘が一人いて名前が「宮沢さそり」であること、それに驚くべきことにカンパネルラが殺されて、切断された首が路面電車の屋根に置かれ、その殺人の容疑者としてジョバンニ(つまり「ぼく」)になっているなど、タイムスリップでは説明できない状態が次々と出来します。山田氏はミステリーも書いているので、なにか猟奇ミステリーのようなテイストもありますね。

これ以上あらすじを書いてしまうとネタバレとなりますので、止めておきましょう。

この作品の大きなテーマは、第3次稿ではブルカニロ博士などが現れて自己犠牲が大きな主題だったのですが、第4次稿ではそれが薄れているというのです。第3次稿は愛国心を育むのに、都合が良いのですが、第4次稿ではそれが薄れて国家に都合が悪く、それが権力の介入を招くことになって、物語が進んでいきます。

個人的には第3次稿と第4次稿に愛国心に与える影響がそんなに異なるのか?ちょっと疑問なんですが、お話としては面白く読めました。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック