「げんきな日本論」を読んだ

これも積読状態なっていた「げんきな日本論」を読んでの感想です。

この本は、社会学者である橋爪大三郎、大澤真幸の両先生の対談であり、新書なのでスラスラと読めるはずですが、何せ 413 ページにもおよぶため、一気に読んだわけではありません。数日かかってしまました。

下に目次を示しますが、大体、古代・中世・近世ごとに 6 つの疑問点、計 18 個のテーマについてお二人で話し合い解を見出していくという構成になっています。
内容が多岐に渡り、先に挙げたようにページ数も多いので、ここで内容を要約するのは不可能ですが、印象に残った部分について書いてみます。

古代(第一部 はじまりの日本)

・なぜ日本では、大きな古墳が造られたのか

 中国では、農業生産性が上がったので、自分と敵という2分法が成長→戦争マシンとなっていく
 →城壁を造る
 日本でも農業生産性が上がったのだが、自分と敵という2分法が成立せず→戦争マシンとはならなかった
 →城壁でなく「古墳」を造った

 つまり、余剰生産力を非軍事的に消費するということと結論付けています。
 では何の時代的変化があって古墳が作られなくなっていくのでしょうか?
 また、古代日本人は本当に戦争マシンとはならなかったのでしょうか?
 確かに城壁で囲まれた武装都市は出来ていないのですが、先立つ弥生時代に「倭国大乱(魏志倭人伝)」とあり、それなりに闘争は在ったように思われます。つまり古墳時代は弥生時代より農業生産性が上がったと思われるのに、なぜ戦争マシンにならかったのか?の理由が良く分かりませんでした。

・なぜ日本には、天皇がいるのか

 天皇制には、どうして世界中のどこの王制にもある王朝の交代がないのか?
 オオキミには姓が無く、人々に姓を与える特権的な地位にいる。
 松本健一氏:このシステムを作ったのは藤原不比等

 首長や王はカミを祀ることで正当性を主張できる
 大和朝廷は各地の豪族を征服した際に、その種族のカミを祀ることを認め、古事記や日本書紀を編纂する際にそのようなカミを織り込み、アマテラスの配下に置き、そのアマテラスの子孫として天皇を置いたことで、国全体の首長であることを主張した。
 古事記や日本書紀のように文字化したことが正当性を主張する大きな力となった。

 なるほど、面白い見解ですが、古事記や日本書紀が編纂される前から十分天皇は国全体の首長ではなかったのではないでしょうか?
 何故、古事記と日本書紀の2種類があるのでしょうか?
 という疑問が湧いてきました。

中世(第二部 なかほどの日本)


・何故、中央政府は軍隊を持たないのか?(これはどのテーマというわけではありませんが、)

 かつては、白村江の戦など、オールジャパンで戦ったことがあったが、それ以後元寇まで、他国から攻撃される危険性が無くなったため、政府が組織する必要がなかった。

 坂上田村麻呂の蝦夷征伐なんかはどういう軍隊を率いたんだろうか?朝廷が集めた兵ではなく、私兵だったのか?
 こういうのは詳しくないので分かりませんが、後に武士の時代を準備するのは朝廷軍が無かったからでしょう。
 これも日本の不思議なところですね。

・なぜ日本には、幕府なるものが存在するのか

 頼朝は朝廷に近づき貴族化して滅んだ平家を見ていたので、征夷大将軍という決して高くない地位を貰い、京都から距離がある鎌倉に幕府を置いて、朝廷の影響を遠ざけた。
 北条執権時代は、北条氏自体は将軍にならず、京都から宮将軍を迎えて一応朝廷とは緩い関係性を保っておいた。

 一応征夷大将軍という官位を貰っているので、天皇の臣下であることは確かでも、承久の乱のように朝廷に弓退くことになるのは凄いことですね。
 まああまり力を持っていない室町幕府は京都に開くのですが、やはりごちゃごちゃになってますね。
 室町時代には鎌倉公方とか古河公方とか居て興味深いのですが、あまり詳しくありません。歴史小説でもあまり描かれてませんね。

近世(第三部 たけなわの日本)

・なぜ江戸時代の人びとは、儒学と国学と蘭学を学んだのか

 朱子学はピンと来ない→仏教の影響を排除して孔子・孟子に立ち返ってテキストを読もう(伊藤仁斎・荻生徂徠)
 日本の古典→中国の漢字(儒教)の影響を排除して「やまとごころ」を読もう(国学:加茂真淵・本居宣長)

 というような並行思想と水戸学が結び付き、後期水戸学派の尊王思想となる。

 これは私の理解なので、正しくないかも知れませんが、面白かったですね。


これらは一部なんですが、日本の歴史は不安定なバランスの上で成立しているということが分かります。
まあ、この内容が日本史学界でどの位評価されるのか?は分かりませんが、興味深い内容でした。


[目次]-----------------------------------

第一部 はじまりの日本

 1、なぜ日本の土器は、世界で一番古いのか
 2、なぜ日本には、青銅器時代がないのか
 3、なぜ日本では、大きな古墳が造られたのか
 4、なぜ日本には、天皇がいるのか
 5、なぜ日本人は、仏教を受け入れたのか
 6、なぜ日本は、律令制を受け入れたのか

第二部 なかほどの日本

 7、なぜ日本には、貴族なるものが存在するのか
 8、なぜ日本には、源氏物語が存在するのか
 9、なぜ日本では、院政なるものが生まれるのか
 10、なぜ日本には、武士なるものが存在するのか
 11、なぜ日本には、幕府なるものが存在するのか
 12、なぜ日本人は、一揆なるものを結ぶのか

第三部 たけなわの日本

 13、なぜ信長は、安土城を造ったのか
 14、なぜ秀吉は、朝鮮に攻め込んだのか
 15、なぜ鉄砲は、市民社会をうみ出さなかったか
 16、なぜ江戸時代の人びとは、儒学と国学と蘭学を学んだのか
 17、なぜ武士たちは、尊皇思想にとりこまれていくのか
 18、なぜ攘夷のはずが、開国になるのか

---------------------------------------------------

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 1

面白い

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック