積率母関数と中心極限定理(2)
前記事の結果:正規分布の積率母関数から標準正規分布の積率母関数は直ぐに求まります。これを踏まえて、中心極限定理の話に進めて行きたいと思います。
正規分布の積率母関数:=\exp&space;\left&space;(&space;\mu&space;t+\frac{\sigma&space;^{2}t^{2}}{2}&space;\right&space;))
から、
の標準正規分布の積率母関数は、
=\exp&space;\left&space;(\frac{t^{2}}{2}&space;\right&space;))
となります。
さて、鈴木義一郎「現代統計学小事典」ブルーバックスからの引用です。
[引用 P149 中心極限定理]======================================
を平均
、分散
の同一分布に従う独立な確率変数とするとき、標本平均に
を掛けた

が正規分布
に近づく。これは「中心極限定理」呼ばれている命題である。
===========================================================
中心極限定理とその証明(1)で提示しているものとは少し違うようですね。。「標本平均に
を掛けた、、」というところが引っかかります。。とりあえず、先に進みます。
まず、扱い易いように変数変換を実施します。

これは、データの標準化ということで、平均=0、分散=1とするためです。したがって、

ということになります。
ここで、
という式を考えます。

なので、マクローリン展開すると、
![\exp \left [ \frac{t}{\sqrt{n}}Y_{i} \right ]=1+\frac{Y_{i}}{\sqrt{n}}t+\frac{Y_{i}^{2}}{2n}t^{2}+\cdots](http://latex.codecogs.com/gif.latex?\exp&space;\left&space;[&space;\frac{t}{\sqrt{n}}Y_{i}&space;\right&space;]=1+\frac{Y_{i}}{\sqrt{n}}t+\frac{Y_{i}^{2}}{2n}t^{2}+\cdots)
です。この式の両辺の期待値をとることを考えます。
左辺:
)
という積率母関数になり、
右辺:

となります。(本当は数学的証明が必要なんですが)t3 以上の項は t→0 で急激にゼロに近づくのでネグレクトしています。つまり、
=&space;1+\frac{t^{2}}{2n})
で、両辺を n 乗すると、
&space;\right&space;\}^{n}=&space;\left&space;(&space;1+\frac{t^{2}}{2n}&space;\right&space;)^{n})
で、
左辺:
=&space;\sqrt{n}\:&space;\frac{\bar{X}-\mu&space;}{\sigma&space;})
の積率母関数
右辺
![\left ( 1+\frac{t^{2}}{2n} \right )^{n}\xrightarrow[]{n \to \infty }\; \exp \left ( \frac{t^{2}}{2} \right )](http://latex.codecogs.com/gif.latex?\left&space;(&space;1+\frac{t^{2}}{2n}&space;\right&space;)^{n}\xrightarrow[]{n&space;\to&space;\infty&space;}\;&space;\exp&space;\left&space;(&space;\frac{t^{2}}{2}&space;\right&space;))
で、これは標準正規分布の積率母関数
から、
は n を大きくして行くと標準正規分布
に近づく
ということになります。どうも冒頭に上げた引用とは少し違う表現になりましたが、
[中心極限定理]======================================
を平均
、分散
の同一分布に従う独立な確率変数とするとき、標本平均

が正規分布
に近づく。これは「中心極限定理」呼ばれている命題である。
=================================================
とした方が良さそうです。。
正規分布の積率母関数:
から、
となります。
さて、鈴木義一郎「現代統計学小事典」ブルーバックスからの引用です。
[引用 P149 中心極限定理]======================================
が正規分布
===========================================================
中心極限定理とその証明(1)で提示しているものとは少し違うようですね。。「標本平均に
まず、扱い易いように変数変換を実施します。
これは、データの標準化ということで、平均=0、分散=1とするためです。したがって、
ということになります。
ここで、
なので、マクローリン展開すると、
です。この式の両辺の期待値をとることを考えます。
左辺:
という積率母関数になり、
右辺:
となります。(本当は数学的証明が必要なんですが)t3 以上の項は t→0 で急激にゼロに近づくのでネグレクトしています。つまり、
で、両辺を n 乗すると、
で、
左辺:
の積率母関数
右辺
で、これは標準正規分布の積率母関数
から、
ということになります。どうも冒頭に上げた引用とは少し違う表現になりましたが、
[中心極限定理]======================================
が正規分布
=================================================
とした方が良さそうです。。
この記事へのコメント
「両辺を n 乗すると、\left \{ M\left ( \frac{t}{\sqrt{n}} \right ) \right \}^{n}= \left ( 1+\frac{t^{2}}{2n} \right )^{n}
で、左辺:〜〜〜」
とありますが、左辺がそのようになる理由がわかりません。
よろしくお願いします。
できましたら、そちらをご覧ください。『積率母関数と中心極限定理(2)」への質問に対する説明』https://teenaka.at.webry.info/202006/article_13.html