対称性の自発的破れとヒッグス(Higgs)機構(1-1)
この本も最後の節になりました。
前に書いたように、ゲージ場は質量を持つことが出来ませんが、"対称性の自発的破れ"という概念と、それを利用したヒッグス(Higgs)機構によって、ゲージ場は質量を持つことができるとのことです。
そこの事情を例題を解きながら勉強していきたいと思いますが、どうも分かり難いので、字面を追いかけるだけになるかも知れません。そこはご了承のほど。。
[例題1]================================
「ゲージ原理とゲージ場(6)」http://teenaka.at.webry.info/201112/article_32.html での N 成分複素スカラー場で、N = 1 の場合を考えよう。Lagrangian は、
\partial ^{\mu }\phi \left ( x \right )-V\left ( \phi ^{*} \phi \right ))
であり
という U(1) 対称性を持っている(局所的なゲージ対称性はいま考えない)。
ポテンシャル V(x) が下図のような形をしていたとしよう。
具体的には、(μ> 0 で)
= -\mu ^{2}x^{2}+\lambda x^{4})
x= 0\; ;\; \; x= 0\; \; \boldsymbol{\mathrm{or}}\;\pm x_{0}\left ( \equiv \frac{\mu }{\sqrt{2\lambda }} \right ))
である。実スカラー場
を
= \frac{1}{\sqrt{2}}\left ( \Phi _{1}\left ( x \right )+i\Phi _{2}\left ( x \right ) \right )\; ,\; \; \boldsymbol{\Phi }\left ( x \right )\equiv \begin{pmatrix} \Phi _{1}\left ( x \right )\\ \Phi _{2}\left ( x \right ) \end{pmatrix})
で定義して、ポテンシャルの幾何学的形を論じ、この系は不安定であることを示せ。
さらに、場の量を再定義することで、安定な系に移行し、そこでは1個の質量のある粒子と、1個の質量のない南部-ゴールドストーン(Nambu-Goldstone)粒子が現われることを示せ。
========================================
Lagrangian は実スカラー場で書き換えると、
^{2})
となり、これは O(2) の対称性を持っているとのことです。(実スカラーに直したのは、図で分かり易くするためで、本質は複素数でも構わないとのこと。)
ポテンシャルを図示すると次のようになります。マンガを描くのが面倒なので写真をとってしまいました。写りが良くないです。。
[引用 _ 図の説明]------------------------
ポテンシャルの形。ワインの瓶の底を思い出そう。場の値がゼロのところは不安定で
の瓶の底が安定であり、それは円周上のどこをとってもよい。
-----------------------------------------
分かっている方には余計なことかも知れませんが、ここでいうポテンシャルというのは -(1/2)m2φ2 という「質量項」と「相互作用」を加えたものを指しています。
上の図を見ると、ワインの瓶の底の部分は円( O(2)対称 )で、原点 Φ1 = Φ2 = 0 のあたりに粒子を置くと、そこは小高い丘になっていて不安定で谷の下の方へ転がり落ちてしまいます。
これは、Lagrangian での粒子の質量が負であることによります(+μ2/2 であることに注目)。
質量項が負の粒子はタキオンと呼ばれ、エネルギーの表式

から、運動量の大きさ
が小さいところ ― 真空の近傍 ― では、エネルギー E0 が虚数になってしまいます。
系の時間変化を見ると、

となり、系が不安定であることが分かります。
時間とともに振動していなければ、系は不安定ということになるようです。
さて、Lagrangian のポテンシャルを
\equiv -\frac{\mu^{2} }{2}\boldsymbol{\Phi }^{T}\cdot\boldsymbol{\Phi }+\frac{\lambda }{4} \left ( \boldsymbol{\Phi }^{T}\cdot\boldsymbol{\Phi } \right )^{2})
としましょう。表現を変えると、
\equiv -\frac{\mu^{2} }{2}\left | \boldsymbol{\Phi } \right |^{2}+\frac{\lambda }{4} \left | \boldsymbol{\Phi } \right |^{4})
なので、
}{d\left | \boldsymbol{\Phi } \right |}= -\mu^{2}\left | \boldsymbol{\Phi } \right |+\lambda \left | \boldsymbol{\Phi } \right |^{3} = \left | \boldsymbol{\Phi } \right |\left (\lambda \left | \boldsymbol{\Phi } \right |^{2}- \mu ^{2} \right )= 0)
から、場が

の値を持つ、つまり瓶の底から、展開し直せば安定な系を記述できるはずでしょう。
ここで、値 v を真空期待値と呼ぶことにします。
今日はこの辺で。。
前に書いたように、ゲージ場は質量を持つことが出来ませんが、"対称性の自発的破れ"という概念と、それを利用したヒッグス(Higgs)機構によって、ゲージ場は質量を持つことができるとのことです。
そこの事情を例題を解きながら勉強していきたいと思いますが、どうも分かり難いので、字面を追いかけるだけになるかも知れません。そこはご了承のほど。。
[例題1]================================
「ゲージ原理とゲージ場(6)」http://teenaka.at.webry.info/201112/article_32.html での N 成分複素スカラー場で、N = 1 の場合を考えよう。Lagrangian は、
であり
ポテンシャル V(x) が下図のような形をしていたとしよう。
具体的には、(μ> 0 で)
である。実スカラー場
で定義して、ポテンシャルの幾何学的形を論じ、この系は不安定であることを示せ。
さらに、場の量を再定義することで、安定な系に移行し、そこでは1個の質量のある粒子と、1個の質量のない南部-ゴールドストーン(Nambu-Goldstone)粒子が現われることを示せ。
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Lagrangian は実スカラー場で書き換えると、
となり、これは O(2) の対称性を持っているとのことです。(実スカラーに直したのは、図で分かり易くするためで、本質は複素数でも構わないとのこと。)
ポテンシャルを図示すると次のようになります。マンガを描くのが面倒なので写真をとってしまいました。写りが良くないです。。
[引用 _ 図の説明]------------------------
ポテンシャルの形。ワインの瓶の底を思い出そう。場の値がゼロのところは不安定で
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分かっている方には余計なことかも知れませんが、ここでいうポテンシャルというのは -(1/2)m2φ2 という「質量項」と「相互作用」を加えたものを指しています。
上の図を見ると、ワインの瓶の底の部分は円( O(2)対称 )で、原点 Φ1 = Φ2 = 0 のあたりに粒子を置くと、そこは小高い丘になっていて不安定で谷の下の方へ転がり落ちてしまいます。
これは、Lagrangian での粒子の質量が負であることによります(+μ2/2 であることに注目)。
質量項が負の粒子はタキオンと呼ばれ、エネルギーの表式
から、運動量の大きさ
系の時間変化を見ると、
となり、系が不安定であることが分かります。
時間とともに振動していなければ、系は不安定ということになるようです。
さて、Lagrangian のポテンシャルを
としましょう。表現を変えると、
なので、
から、場が
の値を持つ、つまり瓶の底から、展開し直せば安定な系を記述できるはずでしょう。
ここで、値 v を真空期待値と呼ぶことにします。
今日はこの辺で。。
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