『場の理論』のながれ

ちょっと古いですが、数学セミナー編集部編「数学の最前線」日本評論社(1990)というインタビューを集めた本がありまして、その中で「場の理論」について江沢洋先生のインタビューがありました。その導入部分の「『場の理論』のながれ」というところを箇条書き的に要約しておこうと思います。なお、これは私の要約ですので、文責は私にあります。

物理学の2本柱
 量子力学 ← 原子などの小さな世界から出てきた
 相対論  ← 電磁気などの大きな世界から出てきた

この2つの理論を1つにしたい → やってみたら上手くいった
 成功例:Dirac の作った電子の 相対論的量子力学
     スピンが理論の中から自然に出てきたし、、

 しかし、「負のエネルギーの困難」が出てきた。
  Dirac 方程式を解くと
   ①電子がプラスのエネルギーを持つもの
   ②電子がマイナスのエネルギーを持つもの
  の2つの解が同時にでてくる。古典力学の考えなら、現実的ではないので②は捨てる。
  古典力学ならエネルギーは連続なので途中にギャップがあると、②の状態にはならない。
  量子力学では量子的遷移で飛び越えらえるので、捨てられない。

  → Dirac は負エネルギー状態は普段は完全に電子でいっぱいになっているという解釈をする。
    (いわゆる、「Dirac の海」)
   だから、パウリの排他率にしたがって、電子は満員の負エネルギー状態に行けない。

 そういう話になると、例えば水素原子というのも大変複雑な系ということになる。
 原子核の周りを周っている1つの電子という背後に無限の電子があり、1つの電子が動けば、周囲の電子は影響を受け、問題にしている電子に反作用を及ぼすだろう。
 一体問題 → 多体問題 になる。
 無限個の粒子がある系では、変化の可能性が無限。→ 自由度は無限大。

 しかし、大事なことは、対象とする系がどれだけ変化するか?ということ。
 負エネルギー状態に詰まっている無限個の電子の中から1つが正の状態に上り、負エネルギーに空いた孔の運動と上がった電子の運動を見ればよいということになれば、二体問題になる。
 それでも、その孔はいくつあっても良いので、自由度は無限大。
 そういう無限の自由度をもった系を扱う力学として「場の理論」は出てきた。


「場の量子論」が考えられたもう1つの動機
  それまでの量子力学では、原子核と電子の及ぼしあう力は遠隔作用の力と考えられてきた。
  (原子核と電子の間の力は瞬間瞬間に両者の距離で決まる。)
  しかし、相対論では離れた2点の同時刻というのは観測者によって違う → 遠隔作用は許されない
  原子核と電子の間に力はジワジワと伝えるようなものがなければならない → 近接作用
  相対論と量子力学をくっつけるには場の理論という見方がどうしても必要。

場の理論からの予言
 粒子にはフェルミ型とボーズ型に限るということ。
  ・相対性原理に従う・エネルギーは負にならない・力は光の速さより速く伝わらない
  ということから、そのことが証明できる。
 湯川の中間子論

場の理論の悩ましさ=「発散の困難」
 場の理論は無限個の素粒子を扱う理論
→ 電子1つがあるように見えて、光子の吸収・放出。その光子が電子・陽電子対を発生。。。と複雑
 電子を加速すると、その電子をとりまく"雲"を一緒に加速することになり、その雲の分だけ電子の質量が増える
→ 計算すると無限大。。

 電子1つがあると、その周りの真空に詰まっている電子の影響が出てくる。
→ 周りの電子を反発して遠くに追いやる
→ 近くには電子がのいない"孔"があいてプラスの電気に見える → 「真空の分極」が起こる。
 電子の周りにプラスの電気がよってきて電子のマイナス電気を打ち消す
→ 計算すると電子の電荷はゼロ。。(これも発散の困難)

 
「発散の困難」が中々消せないので、場の理論は駄目かも知れないという考えが出てきた。
しかし、第二次世界大戦後に
 ・電子のまとっている雲の効果を示す実験がなされた
 ・雲の効果の計算値である無限大の中から物理的に意味のある部分を抽出する処方(くりこみ理論)が発見された
これが非常に成功。極めて良い精度の予言が出来て、それがピッタリ実験に合う。

そこで、場の理論は、どこか悪いところがあるに違いないけれども、その中に何か真理が含まれているに違いないという希望が生まれた。

戦後10年くらいしてから、場の理論の公理論的な検討が始まった。



参考文献;
 数学セミナー編集部編「数学の最前線」日本評論社 P117~122

T_NAKAの感想=====

どうも「Dirac の海」という解釈をそのままにしていますが、現在はこのモデルは否定されているんじゃなかったっけ?。。
そういうところが良く分かりませんね。まあ、インタビュー記事なので仕方がないともいえますが。。

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